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老化した筋と脳を賦活するクスリ

2015.05.26  EurekAlertより

知性派か肉体派か、それとも両方か? どちらであるにせよ、脳や筋肉を若返らせられるクスリがいつの日か発明されるかもしれない。カリフォルニア大学バークレー校の研究者らが、マウスの脳の中の古い細胞と身体のの骨格筋細胞をいっぺんに若返らせることのできる小さい分子薬となる物質を発見したと報告している。この知見をヒトに応用することができれば、身体中の老化した組織を若返らせることが可能になる時代が来る可能性がある。

研究者らは老化した脳だけでなく、同じく老化した筋の必要不可欠な機能を改善する一つの小さい分子を用いる方法を確立した。これは朗報である。というのも、もしもそれぞれの組織が異なった分子的老化システムを有しているとすれば、単純な介入によって多機能組織を改善するような事はできないということになるからだ。

本研究で用いられた薬は、形質転換成長因子β1(TGF-β1)と呼ばれる成長因子の活性を阻害する。そしてそれが過去10年間にわたって、様々な種類の幹細胞が再生する能力を有している事を研究者たちは明らかにしてきた。以前の研究によれば、TGF-β1パスウェイは多組織の老化のいわば真犯人の一人であるような役割を持つのではないかと考えられていた。つまりこのたんぱくの発現が、上方制御されている場合には、脳やすい臓、心筋や骨格筋などの様々な組織における多機能肝細胞を老化させているのだ。本研究は老化と共に増加するTGF-β1パスウェイがより若い状態で機能する、そして様々な組織において若返り作用を示すカギとなっている事を示唆する初めての実証研究となっている。

加齢現象は、部分的には成人の幹細胞が細胞の再生に失敗して身体組織が元通りにならなくなるという事が繰り返されて起こる、ということができる。研究者らによればこういった幹細胞が完全に働かなくなることの原因は幹細胞周辺の抑制性化学物質によるものであり、それらの内のいくつかは低レベルの慢性的炎症によってその周辺に蓄積されていくのであると考えているようだ。 低レベル炎症性が亢進することもまた、加齢現象の一つの証明ともなっている。

研究者らは2005年に高齢マウスに若年マウスの血液を注入するという実験を行った(このプロセスは並体結合と呼ばれるものだ)。その結果、筋、肝臓、脳と海馬の幹細胞が再活性化し、若年マウスの血液が加齢している細胞の周囲環境を若返らせるような働きをしていることが明らかにされたのだ。昨年(2014年)、医師達によって若年者の血漿が高齢アルツハイマー症患者の脳のダメージを回復させることに役立ちうるかどうかを検討する試験が、先の実験結果を応用して行われている。

この様な血液代替療法のような手法は危険ではないにせよ、実用的ではない、と研究者は指摘する。そのため、研究者らはどの化学物質が多くの器官の若返りや若さを維持するために安全且つ効果的に利用しうるかについて同定しようと試みてきた。一つのカギとなる化学的ターゲットがTGF-β1であり、この分子は加齢とともに全ての組織において増加し、高濃度で存在している場合には幹細胞の活性を阻害してしまうのだ。

5年前、脳内の神経幹細胞を研究していた研究者らは、海馬内でのTGF-β1活性について検討した。海馬は記憶や学習において重要な働きを持つ部位である事が知られている。老化の危険信号とされるものは学習、記憶、そして認知機能の低下である。今般の研究では、研究者らは高齢マウスにおいて、脳の海馬内でTGF-β1が身体のその他の組織と同じレベルで増加していることを明らかにした。研究者らが開発したウィルス・ベクター(遺伝子治療用に開発された遺伝子組み換えウィルス)を用いて、TGF-β1の活性をノックダウンする為にマウス脳内に遺伝的抑制因子を送り込んだ。結果、海馬の幹細胞がより若々しく機能しはじめ、新しい神経細胞を生成するようになったのだ。

ついで研究者らは血中にTGF-β1受容体をブロックする物質を注入した。こうすることでTGF-β1の機能が低下する。注入されたこの小さい分子はAlk5キナーゼ抑制因子と呼ばれていて、すでに抗がん薬としての知見が行われているものである。結果、高齢マウスの脳機能と筋組織の機能を共に再生することに成功し、筋をより強く、また脳をより明晰にしている可能性があることが指摘されているのだ。

研究者らは本研究の知見はまだ、『若返り治療法』を目指した最初のステップに過ぎないという。成人の幹細胞の調整がその他の生化学的要因によっても引きおこされているからだ。研究者らは今後安全な幹細胞再生の技術を検討して、様々な菜例による問題や病理学的問題に対応出来るような応用技術を確立していくことを目指している。

出典は『腫瘍標的』 (論文要旨)


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