栄研スタッフによる解説論文集

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高校生女子における
減量行動と背景因子に関する研究

国立健康・栄養研究所 母子健康・栄養部   瀧本 秀美、戸谷 誠之
佐賀県伊万里保健所   上松 初美、野中 芳子、益本 義久
国立健康・栄養研究所 健康増進部   石川 和子、太田 壽城

1)緒言

近年、低年齢からの女子のやせ願望の広がりが、報告されている1-2)。矢倉ら2)は、非肥満者の小学生女子の39.9%が肥満意識を持っており、そのうち69.9%は減量を実行していたと報告している。また、慢性的な減量行為と、喫煙や飲酒、薬物使用などの問題行動との関連を指摘した報告3)もみられる。また、若年期に不必要な減量を行うことで、種々の内分泌異常が生じることが知られている5,6)。自己の体型に関する正しい認識を持ち、適切な体重管理方法を実行することは、生涯にわたる女性の健康の維持に不可欠であると考えられる。

ここで問題となるのは、減量を必要としない者に健康上のリスクをもたらす、減量行動の内容や程度、およびその背景にある体型意識である。そこで我々は、健康な高校生女子の集団を対象に、減量行動とその背景因子について、以下の調査研究を行った。

2)対象および方法

対象は、佐賀県内の高校1、2年の女子生徒367名である。1998年7月に、「思春期保健調査事業」の一環として、自記式の質問紙による調査を行い、同時に、身長と体重の測定を行った。さらに、生体インピーダンス法(TBF-541, TANITA, 東京)をもちいて体脂肪量の測定を行い、体脂肪率を算出した。Body Mass Index (BMI)は、体重kg/(身長m)2として算出した。こうして得られたBMIをもとに、日本肥満学会による肥満度の分類15)をあてはめ、BMI19.8未満のものを「やせ」、19.8以上24.2未満を「標準」、24.2以上26.4未満を「過体重」、 BMIが26.4をこえるものを「肥満」とした。

質問紙の内容は、1)減量の実施や体型認識、やせ願望に関する項目、2)食生活や運動習慣など生活状況に関する項目、3)月経に関する項目を設けた。減量の実施に関する項目では、1)食事の量を減らす、2)間食や夜食を控える、3)運動をする、4)食べたものを吐く、5)薬を使う、5項目の減量行動をあげ、該当するものすべてを選択する方式をとった。ここで、Frenchら6)の定義に従い、上記の1)、4)、5)のいずれかを実行した経験のあるものを健康的でない減量行動をとった群(unhealthy群、以下U群)とし、その他をhealthy群(以下H群)とした。過去に一度も減量を行わなかった群は、none群(以下N群)とした。

体型認識に関する項目では、現在の体型について、「やせている」、「ふつう」、「太っている」、「わからない」の4つのうち該当するものを選択する方式をとった。体型観に関する項目では、現在の体型よりも「やせたい」、「このままでよい」、「太りたい」、「わからない」の4つのうち該当するものを選択する方式をとった。さらに、理想的な体型になることで期待される結果として、「好きな服を着られる」、「異性にもてる」、「健康になる」、「きれいになる」の中からあてはまるもの全てを選択する方式をとった。減量に関する情報源として用いたものとしては、「家族」、「友人」、「教師」、「医師」、「週刊誌・雑誌」、「テレビ」をあげ、この中から3つ選択する方式をとった。生活習慣に関する項目は、朝食の欠食の有無や運動習慣、就寝時間に関するものである。月経に関する項目では初経年齢と、現在の月経の状況について「順調」、「不順」、「無月経」のいずれに該当するかを調査した。

調査対象者367名中1名は質問紙の記載が不備であったため、解析から除外し、合計366名を解析の対象とした。

3)対象者の身体状況

平均身長は156.6cm、平均体重は50.6kgであった。平均BMIと平均体脂肪率はそれぞれ20.4、23.3%であった。平均初経年齢は12.3歳であり、初経の発来していないものはみられなかった。現在の月経周期の状況が「順調」であると回答したものは56.3%、「不順」は38.5%、「無月経」は19名(5.2%)であった。「無月経」のものは、平均初経年齢が12.5歳と「順調」や「不順」のものの12.3歳にくらべ高かったが、一元配置分散分析では有意差を認めなかった。

4)減量実行と身体状況

対象者の58.7%にあたる215名が減量実行者であった。減量実行者群と非実行者群の身長、体重、Body Mass Index(BMI)、体脂肪率、年齢および初経年齢に関して、両群の平均値をt検定を用いて比較したところ、p<0.05で有意差を認めたのは初経年齢のみであった。

日本肥満学会による肥満度の分類7)では、対象者の49.5%が「やせ」に相当した。減量実行者における「やせ」の割合が39.2%であったのに対し、非実行者では63.6%と過半数を占めた。「過体重」のものは、全体の4.4%であり、減量実行者で3.7%、非実行者で5.3%であった。また、「肥満」のものは、全体の3.3%であり、減量実行者で3.7%、非実行者で2.6%であった。「過体重」あるいは「肥満」に相当するものの割合は、減量実行者で7.4%、非実行者で7.8%であり、差はみられなかった。 過去に行った減量の方法に関して、最も該当者の多かった減量方法は、「間食・夜食を控える」であり、減量実行者群の76.2%に上った。次に多かったのは「食事の量を減らす」の52.6%であり、「運動をする」と回答したものは、減量実行者群の32.6%であった。「薬を使う」と回答したものは1名のみであったが、「食べたものを吐く」は6名みられ、減量実行者の2.8%に相当した。減量実行者のうち、上記の5項目のうち1つだけを実行したものは101名(47.0%)であった。2つ実行したものは89名(41.4%)、3つ実行したものは25名(11.6%)であった。

「食事の量を減らす」、「薬を使う」、「食べたものを吐く」のいずれかを実行した経験のあるU群は117名であり、対象者全体の32.0%を占めた。H群は98名(26.8%)、N群は151名(41.2%)であった。表1に示した通り、肥満度の分布には、N群とH群、N群とU群の間でχ2検定にて有意差がみられた(p<0.01)が、「過体重」あるいは「肥満」に相当するものの割合は、すべての群で10%を下回っていた。

次に、N群、U群、H群のそれぞれについて、身長、体重、BMI、体脂肪率、年齢、初経年齢の平均値の差の検定を、一元配置分散分析を用いて行い、その結果を表2に示した。U群では、N群にくらべ平均体脂肪率が有意に高かった(p<0.05)が、H群とは有意差を認めなかった。U群とH群 とで、有意差を認めたのは、調査時の平均年齢のみであり、U群で有意に高かった(p<0.05)。

5)減量実行と体型意識、理想体型観

N群、U群、H群のそれぞれについて、体型の自己認識について、「やせている」、「ふつう」、「太っている」、「わからない」の4群に分け、該当者の人数の分布を図1に示した。自分の現在の体型を、「やせている」と認識しているものは、全体で2名のみ(0.5%)であり、「ふつう」であると認識しているものは28.7%であった。一方、「太っている」と認識しているものは57.9%と過半数を占めた。U群、H群ともにN群との間で、自己の体型認識の分布にχ2検定でp<0.01の有意差を認めた。しかし、U群とH群との比較では、有意差はみられなかった。

次に、やせ願望の程度を把握する目的で、理想体型を現状と比較し、「やせたい」、「このままでよい」、「太りたい」、「わからない」のいずれに該当するかを調査した。対象者の78.7%に相当する288名が「やせたい」と回答した。「このままでよい」としたものは48名(13.1%)、「太りたい」は1名(0.3%)、「わからない」は29名(7.9%)であった。図1に示す通り、「やせたい」と回答したものはN群においても59.6%を占めており、U群では94.0%、H群では89.8%とほとんどを占めた。U群、H群ともにN群との間で、理想とする体型の分布にχ2検定でp<0.05の有意差を認めた。

「やせたい」と回答したものについて、やせることで期待される結果について調査したところ、表3に示したように、最も多かった回答は「好きな服が着られる」であり、「やせたい」と回答したもの全体の83.7%をしめた。次に多かった回答は、「きれいになる」であり、52.1%であった。U群では、「好きな服が着られる」と回答したものは90.9%にのぼり、N群との間でχ2検定でp<0.01の有意差を認めた。「きれいになる」と回答したものも、減量を実行した群で過半数を占め、U群、H群ともにN群との間で、χ2検定でp<0.05の有意差を認めた。有意差は認めなかったものの、N群では「健康になる」という回答が、減量を実行した群であるU群、H群に比べ多くみられた。「異性にもてる」という回答はどの群でも少なかった。

6)やせ願望と減量に関する情報源

「やせたい」と回答したものについて、減量のための情報源を調査した結果を表4に示した。U群のうち3名、H群のうち2名、N群のうち10名は、「知りたいと思わない」と回答したため、除外した。最も多かった回答は「週刊誌・雑誌」であり、全体の76.2%にのぼった。U群では81.3%が「週刊誌・雑誌」を情報源としており、H群で69.8%、N群で61.3%が情報源としてあげていた。次に多かったのは、「友人」であり、65.2%を占めたが、これはU群で最も高く70.1%であった。N群では「テレビ」と回答したものが多く、61.3%であり、U群の43.9%にくらべχ2検定にて有意に高く(p<0.05)、H群の40.7%と比べても有意に高かった(p<0.01)。「家族」と回答したものは、やせ願望をもつもの全体の16.5%であったが、U群で21.5%と最も高かった。「医師」は4名(1.4%)、「教師」と回答したものはわずか1名(0.3%)であった。

各情報源間の相関係数を求めたところ、「週刊誌・雑誌」を情報源としてあげたものは、「友人」や「テレビ」も情報源とする場合が多く、それぞれ相関係数r=0.167とr=0.271であった。

7)考察

対象者のほとんどの者が、客観的な肥満度の判定基準では「やせ」あるいは「標準」体型であったにも関わらず、減量を実行した経験を有するものは58.7%と過半数をこえていた。減量実行者のなかでも、「食事の量を減らす」、「食べたものを吐く」、「薬を使う」のいずれかを実行した、U群は54.4%であった。U群では、BMIが24.2をこえるものがわずか8.6%であったにも関わらず、94.0%がさらにやせることを望んでおり、やせ願望が強い傾向が認められた。また、やせ願望の背景として、「好きな服が着られる」、あるいは「きれいになる」といった、やせていることが美しいという意識が潜在し、やせることの健康への悪影響に無関心であることを伺わせた。米国の高校生女子548名について、ファッション雑誌を読む頻度と減量行動に関する検討を行ったFieldらは8)、週2回以上読むものの64%、ほとんど読まないものの48%で、雑誌の記事が減量行動のきっかけとなっていたと報告しており、マスメディアの強い影響を示唆している。本研究においても、やせ願望をもつものの主な情報源が、週刊誌・雑誌、テレビなどのマスメディアや友人であった。

今回の調査では、減量行動について、過去に実施した方法と、体型認識ややせ願望に絞って検討を行った。「食事の量を減らす」、「食べたものを吐く」、「薬を使う」などの減量行動は、マスメディアに影響された自己の体型認識の歪みから生じる、強いやせ願望と関連していた。しかし、減量を行った経験のない、比較的やせた体格のものでもやせ願望が顕著であり、今後身体の成熟に伴う体重増加を来した場合には、容易に減量行動に走ることが予想された。その一方、減量を行った経験のないものでは、「テレビ」を減量の情報源としてあげるものの割合が高く、映像と活字といった媒体の違いによって、高校生女子の受ける影響が異なると考えられた。

我々は、今回肥満度の判定方法として、BMIを用いた日本肥満学会による基準7)を用いた。これは、BMIは体脂肪率との相関が高く9)、また身長と体重の測定値から算出できるという利便性のため、成人における肥満度の判定にしばしば用いられているためである。しかし、本調査において、対象者の49.5%が「やせ」と判定されたことには、発育過程にある高校生女子に、成人の判定基準を用いたためと考えられる。我が国では、小児期から青年期を対象にした村田ら10)による年齢別身長別標準体重が示されているが、日常的に用いるにはやや煩雑である。本研究の対象者の高校生女子では、BMIと体脂肪率の相関は0.914と高く、肥満度の判定法にBMIを用いることの有用性が示唆された。今後は思春期の身体発育を考慮に入れた、BMIによる肥満度の判定基準づくりが望まれる。

今後は対象者らに対して、体型や体重管理に関する健康教育を行うとともに、発育期の体位と生活習慣との関連について、さらに追跡調査を行う必要があると考えられた。

8)参考文献

1)Ohtahara H, Ohzeki T, Hanaki K, et al. Abnormal perception of body weight is not solely observed in pubertal girls: incorrect body image in children and its relationship to body weight. Acta Psychiatr Scand 1993; 87 :218-222.
2)矢倉紀子,広江かおり,笠置綱清.思春期周辺の若者のヤセ願望に関する研究(第一報)-ボディ・イメージとBMI,減量実行との関連性-.小児保健1993; 52(5):521-524.
3)Killen JD, Taylor CB, Telch MJ, Robinson TN, Maron DJ, Saylor KE. Depressive symptoms and substance use among adolescent binge eaters and purgers: a defined population study. Am J Public Health 1987;77: 1539-1541
4)Pirke KM, Schweiger U, Strowitzki T, Tuschl RJ, Laessle RG, Broocks A, Huber B, Middendorf R. Dieting causes menstrual irregularities in normal weight young women through impairment of episodic lutenizing hormone secretion. Fertil Steril 1989; 51: 263-268
5)Genazzani AD, Petraglia F, Fabbri G, Monzani A, Montanini V, Genazzani AR. Evidence of luteinizing hormone secretion in hypothalamic amenorrhea associated with weight loss. Fertil Steril 1990;54(2):222-226
6)French SA, Story M, Downes B, Resnick MD, Blum RW. Frequent dieting among adolescents: psychosocial and health behavior correlates. Am J Public Health 1995; 85: 695-701
7)肥満症 診断・治療・指導の手引き. 日本肥満学会編. 医歯薬出版 1996.
8)Field AE, Cheung L, Wolf AM, Herzog DB, Gortmaker SL, Colditz GA. Exposure to the mass media and weight concerns among girls. Pediatrics 1999; 103(3): E36. URL:http://www.pediatrics.org/cgi/content/full/103/3/e36
9)Garrow JS, Webster J. Quetelet's index(W/H2) as a measure of fatness. Int J Obesity 1985; 9: 299-306.
10)村田光範, 田原佳子,大野優子, 石島央子,巷野悟郎 . 昭和55年度乳児身体発育値および文部省学校保健統計調査結果を用いた平滑化スプライン身体発育曲線の作成. 小児保健研究1987;46(3):299‐304 .


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