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  栄研スタッフによる解説論文集 作成日 2003/06/12

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  ビタミンサプリメント *

斎 藤 衛 郎 (国立健康・栄養研究所 食品機能研究部長)


〔SUMMARY〕  ビタミンサプリメントの摂取にあたっては常に食事を第一に考え、サプリメントの利用は、あくまでも食事から摂取できない場合、できにくい場合の補給・補完とすることを前提に考えたい。そのうえで、各ビタミンの薬理的効果を求める場合は、常に過剰摂取とならないように注意するとともに、食事全体のなかでの各ビタミンのバランスが大きく崩れないような配慮が必要である。栄養所要量や栄養機能食品で示されている摂取安全域内での摂取に配慮したい。唯一食事から十分量摂取しにくいビタミンとして葉酸があるが、ほかにもいくつかのビタミンは食事から摂取しにくいものがある。これらにあっては、サプリメントを効果的に利用できる。サプリメントを適切に摂取することにより、通常の食生活を大きく変えることなく食生活の改善、健康の保持・増進、生活の質(QOL)の向上に役立つ。〔臨床検査 45: 1060-1070,2001〕

〔KEYWORDS〕 ビタミン、ビタミンサプリメント、栄養所要量、栄養機能食品


1.はじめに

 われわれが普段食生活で食べているのは食品であり栄養素ではない。しかし、食品から摂取している本体は、その中に含まれる栄養成分である。適正な食生活を営んでいれば、栄養素摂取バランスの崩れに起因する病気のリスクを高めることはないが、一般の人々が自分の食事の偏りを自覚するのはなかなか難しいものである。専門家の適切なアドバイスが求められるゆえんでもある。他方、適正な食生活を求めても、それができにくい人たちがいることも事実である。食事を作る困難さや咀嚼・嚥下が困難な場合の高齢者、都市の24時間化による生活の不規則な者の増加、仕事などの都合で十分な食事がとれない場合、あるいは単身世帯の増加などがそれにあたる。こうした人たちでは、栄養素の不足やバランスの崩れを、蛋白質、ビタミンやミネラルサプリメントのようないわゆる栄養補助食品で補い、食生活の改善と健康の維持・増進に役立てることができる。
 一方で、わが国では、国民所得の増加、国民の健康に対する関心、知識の向上や、食経験に基づく知見の積み重ねなどから、ビタミンを始めとした栄養補助食品に対する国民の関心が高まってきており、それに求められる機能も複雑かつ多様化している。わずかな体調の変化により真偽に関係なく健康不安を感じ、こうした栄養補助食品に頼る傾向もある。栄養補助食品は医薬品ではなく食品の範疇であるが、医薬品と同じ効果があると感じる一方で、食品だからいくら食べても安全であると思って記載されている摂取量以上に摂取したりする傾向もあながち否定できない。サプリメントは一般に少量で高濃度に目的とする栄養素を含んでいるので、食生活を大きく変えなくても必要とする栄養素のみを効率的に補給できる反面、過剰摂取になりやすく、身体に不必要な負担をかけるばかりでなく、過剰症になることもある。したがって、このようなサプリメントは、適切に摂取することで食生活の改善、健康の保持・増進、生活の質(QOL)の向上に寄与できることも確かである。

2.サプリメント摂取の基本的な考え方

 前述のように、生活形態が変化し、食生活が多様化している現代においては、すべての人々が食事から必要な栄養素を過不足なく摂取することは難しくなっている。また、人々の栄養成分に求める機能も複雑かつ多様化していることも確かであり、食生活だけでは満足できないのかもしれない。サプリメントの摂取により手軽に栄養のバランスをとりたいとの欲望もあるであろう。しかし一方で、栄養学の進歩、そしてそれを伝える、あるいは入手する情報技術の発達により、どのような栄養素をどのように、どれだけ摂取すれば、健康の維持・増進に役立つのかが明らかにされ、情報として入手できる環境にもある。したがって、サプリメントの利用に際しては、あくまでもバランスのとれた望ましい食生活を営むということを第一に重視しなくてはならない。すなわち、必要とされる栄養素は食事から摂取することを前提におき、どうしても摂取できない栄養素、さらに、その栄養素の摂取量を増すことにより病気を予防する、病気のリスクを減らす、潜在的な疾病状態を改善するなどの薬理的効果の科学的事実が明らかな場合に、その目的にそって適量のサプリメントを利用することが大切である。すなわち、ビタミンにあっては、不足やバランスの乱れを是正する場合は総合ビタミン剤的なサプリメントを、薬理的効果を期待する場合は単一ビタミンのサプリメントを利用することになる。しかしこうした場合にあっても、常に、ある特定の栄養素を多量に摂取することによる栄養バランスの崩れ、過剰摂取とそれに伴う健康障害の危険性をはらんでいることを念頭に置いて利用すべきである。ビタミンに限らずサプリメントとは本来そのようなものである。あくまでもサプリメントであり、食事の主体になりうるものではない。また、栄養素摂取の安全域内での利用に限定すべきである。

3.栄養所要量の策定

 「第六次改定日本人の栄養所要量」1)が平成12年4月より使用されている。在来の「栄養所要量」は、集団を対象にし、栄養素欠乏症を解消して、健康の維持増進、さらに健康保護を目的として策定されてきた。今回策定された「第六次改定日本人の栄養所要量」、すなわち「食事摂取基準」は、在来の栄養所要量に加えて、健康増進、慢性非感染症の危険要因を軽減・除去するための指標として策定された。これは、集団だけでなく個人も対象にして、生活習慣病の一次予防に取り組むために活用できるものとされている。策定にあたっては、栄養素欠乏症を予防する観点から「平均必要量(EAR)」、「栄養所要量(RDA、AI)」を算出し、サプリメントなどの摂取による過剰摂取に伴う健康障害を予防する観点から、「許容上限摂取量(UL)」を算出した。「食事摂取基準」は、平均必要量、栄養所要量、許容上限摂取量の数値を総称するものである(図1)。栄養所要量と許容上限摂取量との間の摂取量幅は、栄養素摂取の摂取安全域とする。この範囲内において、個人の栄養状態を評価・判定し、それぞれに見合った栄養補給が行われる。ビタミンに関しては、13種類の食事摂取基準が性別、年齢階層別、そして妊婦、授乳婦に対する付加量として決められた(表1)。これらビタミンの生理作用の詳細1)は、本特集の他の総説を参照していただきたい。また、食事摂取基準の詳細に関しては、他に詳しく解説されているのでそれらを参照していただきたい2〜4)


4.ビタミン類摂取の現状

 近年の日本人のビタミン類の摂取は、平均的に見れば不足は見られず、欠乏症発症の報告は稀である。しかし、高齢者や単身世帯の増加、若年者の誤ったダイエットなど特殊な食生活環境下において、潜在性のビタミン欠乏症が散見される。表2にビタミン類摂取の現状を示した5〜12、14)。調査データーが少なく、国民栄養調査に基づいたデータを除いて日本の現状を代表するデーターかどうか疑問が残るが、限られた報告から判断すると、平均的にはビタミン所要量をほぼ満たしていると考えられる。ビタミンB6の摂取量がやや少ないようである。その反面、健康志向から、薬理効果を求めて不必要に大量のビタミンサプリメントを摂取する傾向も生じている。健康維持量の認識が大切である。


5.ビタミンと過剰症

 ビタミンサプリメントの摂取にあたっては、常に、過剰症の認められるビタミンと認められないビタミンを認識し、さらに自分の食生活におけるビタミンの摂取レベルを大まかに把握して、トータルとして摂取過剰にならない細心の注意が必要である。表3にビタミン過剰症を示した1)。脂溶性ビタミンのうち、ビタミンAは過剰症が出やすく、特に妊娠初期に過剰摂取すると奇形児の発生率が高まることが知られており注意が必要である。他の脂溶性ビタミンもすべてに過剰症が報告されており、許容上限摂取量内での摂取が必要である。一般に、水溶性のビタミンは多く摂取しても過剰の害がないと考えられているが、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸には過剰症が報告されているので注意しなければいけない。ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンCには過剰症はないとされている(表41)

6.保健機能食品制度の創設

 平成13年4月より保健機能食品制度がスタートした。この制度は、旧厚生省内での食薬区分の見直しと並行して、いわゆる栄養補助食品の取扱いについての検討を経て創設されたものである。これにより、錠剤・カプセルなど形状を問わず、すべてが食品として扱えるようになった。この制度では、いわゆる栄養補助食品および健康食品のうち一定の要件を満たすものを保健機能食品と称するとともに、その規格基準、表示基準などを定めている。

 保健機能食品制度は、従来からある個別許可型の特定保健用食品と規格基準型の栄養機能食品から成り立っている(図2)。保健機能食品(栄養機能食品および特定保健用食品)に関する基本的考え方は、次のようである。1)国の栄養目標および健康政策に合致したものであること、2)栄養成分の補給・補完あるいは特定の保健の用途に資するもの(身体の機能や構造に影響を与え、健康の維持・増進に役立つものを含む)であることを明らかにするものであること、3)表示の科学的根拠が妥当なものであり、かつ事実を述べたものであること、4)消費者への適切な情報提供の観点から、理解しやすく、正しい文章および用語を用い、明瞭なものであること、5)過剰摂取や禁忌による健康危害を防止する観点から、適切な摂取方法などを含めた注意喚起表示を義務づけること、6)食品衛生法、栄養改善法、薬事法等の法令に適合するものであること、7)医薬品などと誤認しないよう、保健機能食品(栄養機能食品あるいは特定保健用食品)である旨を明示するとともに、疾病の診断、治療または予防にかかわる表示をしてはならないこと。特定保健用食品および栄養機能食品の内容は次の通りである 。

1)特定保健用食品

 特定保健用食品については、保健の目的が期待できる旨の表示ができる食品として、平成3年に栄養改善法に基づく制度として創設され、本年5月23日現在ですでに252品目が許可されている。今回の保健機能食品制度においては、特定保健用食品制度にも一部変更があったが、原則的には従来と同様であり、ここでは詳細は省略する。

2)栄養機能食品について

栄養機能食品は、いわゆる規格基準型の食品であり、当該栄養成分が規格基準に合致していれば自由に製造、販売が可能なものであり、厚生労働省への許可申請はもちろん、届出の必要もないものである。この栄養機能食品については、諸外国で食品として販売されているビタミン、ミネラルなどのサプリメントをわが国でも食品として販売することができるようにという、いわゆる栄養補助食品に関する規制緩和の関係から検討が始まったものである。また、すでに消費者の間でサプリメントという商品が一定の定着を見、あるいは流通していること、こうした状況の中で消費者の選択のための情報を提供すること、消費者の安全性の確保が急務となっている社会状況も背景にあった。

今回の栄養機能食品制度では、平成12年4月より使用されている「第六次改定日本人の栄養所要量」で取り上げられた26項目のビタミン、ミネラルのうち、ビタミン12種類、ミネラル2種類の計14種類を対象として規格基準および表示基準が定められた。栄養成分の補給・補完および過剰摂取や禁忌による健康危害の防止に重点を置いている。したがって、栄養機能食品の上限値は医薬部外品の最大分量を超えない値とし、下限値は栄養所要量の1/3とした。栄養機能食品の規格基準設定のための基本的考え方を表5に示す。食事からの摂取量(栄養摂取量)を考慮している点に注意したい。また、この基本的考え方により決められたビタミン12種類の配合限度量(上限値・下限値)を表6に示す。さらに、保健機能食品に表示すべき事項を表7に、具体的な表示例を表8に示す。薬に近い表示すべき事項を認めている点では一歩前進と思われるが、具体的な表示例にあっては、薬との関係で、欠乏症の名称を使えない矛盾、例えば夜盲症、クル病、壊血病などである。また、薬に用いられる薬効表現ができないことにより、理解しやすく明瞭どころか逆に非常に曖昧で混乱を招くような表現が使われ、ビタミンとしての生理作用が異なるにもかかわらず、栄養機能として同じ表示になってしまった矛盾など、縦割り行政の弊害がこのようなところにも現れてきているのは残念である。

しかし、国民の健康を守る立場から、行政として一つの指針を示し、消費者の選択のための情報を提供できたことは、栄養機能食品制度の策定にかかわった一人として、手前味噌ながら一歩前進と評価してよいのではなかろうか。個人的には、そもそも食事は個人の嗜好、自由な選択に委ねられるべきものであり、行政が細かな指示を出すような時代ではないかもしれないと感じている。しかし、情報洪水の現代にあって、製造者、販売者が発信したい情報(広告、宣伝)と消費者が求める情報は必ずしも一致するとは限らず、一部消費者のなかにそれら情報の整理にあたって混乱がみられる。行政が発信する情報も消費者の選択の際の大きな判断基準となることは否定できない。消費者が選択する際に役立つ情報の提供は必須である。

今後、栄養成分の追加、わかりやすい表示基準の作成、消費者のなかに定着するための努力、CODEX(FAO/WHO合同食品規格計画)を始めとした国際的な基準との整合性を図るための努力など残された課題も多い。

7.ビタミン摂取に関しての留意点1,13,14)

1)ビタミンA、β-カロテン

ビタミンAは過剰症が出やすく、特に妊娠初期に過剰摂取すると奇形児の発生率が高まることが知られており注意が必要である。また、腎臓はレチノール結合蛋白質の分解に関与するので、腎臓透析をしている腎不全の患者および慢性の腎臓疾患を持つ患者では、1日5,000IU程度のレチノールの摂取でも過剰症が発現しやすいので注意が必要である。過剰症の診断は、血清ビタミンA濃度とレチニルエステル/レチノール比の上昇による。

β-カロテンなどのプロビタミンAの大量摂取による副作用の可能性は低いが、癌発生に対しては、大規模介入試験で、消化器癌を抑制したとの報告と、喫煙経験者の肺癌発生を増加させたとの報告があり、いまだ結論が出ていない。

2)ビタミンD

皮膚にあるプロビタミンDは、日光の紫外線によりビタミンDに変換され体内に吸収される。皮膚でのビタミンD産生能力が低下している高齢者では、十分なビタミンDの摂取が必要である。また、ビタミンDは、腎臓で代謝されて最も生理活性の強い1α, 25-ジヒドロキシビタミンDとなるので、ビタミンAと同様に、腎臓疾患患者では活性型ビタミンDの低下に注意する必要がある。

3)ビタミンE

ビタミンEの所要量はRRR-α-トコフェロール当量として成人男性10mg、女性8mgとなっている。ビタミンE摂取の現状は、平均的にほぼこのレベルに達しているが、日本人は高度不飽和脂肪酸に富む魚の摂取が多いので、E(mg)/PUFA(g)比で見ると必ずしも十分なビタミンE摂取量とは思えない。妊婦、授乳婦では、さらにそれぞれ2mgと3mgの付加量があるので、サプリメントの利用が効果的である。

4)ビタミンK

抗生物質の投与は、腸内細菌によるビタミンK2産生量の低下とビタミンKエポキシド還元酵素活性の阻害によるビタミンK作用の低下を引き起こすことが知られている。また、70歳以上の高齢者では、胆汁酸塩類や膵液の分泌量低下、食事性脂肪摂取量の減少などにより、腸管からのビタミンKの吸収量が低下すると思われる。ビタミンKは血液凝固因子を活性化して血液凝固を促進するので、血栓症や梗塞症など血液凝固抑制剤使用者や長期間の抗生物質の投与、慢性の胆道閉塞症、脂肪吸収不全症などでは注意が必要である。

5)ビタミンB1、B2、ナイアシン、B6

運動とビタミンB1の必要量との関係については一定の成績が得られていないが、ビタミンB1の炭水化物代謝に関与する機能から考えて、重労働や長時間のスポーツトレーニングのような場合にはビタミンB1の必要量の増加があると考えられる。アルコールの多飲によっても要求量が増大する。ビタミンB2はエネルギー代謝系を介して、炭水化物と脂肪の代謝に関係する。したがって、ビタミンB1と同様に、消費エネルギー量が増大する場合、および炭水化物と脂肪の摂取量が増加する場合には、必要量が増加する。ナイアシンは、生体内で補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)となり生理機能が発揮される。ナイアシンの必要量は、ビタミンB1、B2と同様に摂取エネルギー量に依存する。ビタミンB6の要求量は、摂取エネルギー量よりは摂取蛋白質量に依存する。高蛋白質食では、ビタミンB6の必要量の増加があると考えられる。

6)葉酸

米国および英国では、医学的ガイドラインとして妊娠を予定している女性では、葉酸を400μg/日摂取すべきであり、神経管の発育不全による神経管障害(NTD)児を一度出産し、危険性の高い女性では、再発予防のため4〜5mg/日摂取すべきであるとしている。

葉酸は、ホモシステインのメチオニンへの転換に必要なので、葉酸欠乏では、血液中にホモシステインが蓄積し、動脈硬化や動脈血栓が見られるようになる。350〜400μg/日の摂取で血漿中ホモシステイン濃度が正常範囲となる。しかし、葉酸を食事のみで400μg/日摂取することは無理なので、今回の所要量では、食事から摂取可能な200μg/日としている。先進各国から低すぎるとの批判の起きているビタミンである。特に、充分な食事量を確保できない高齢者および付加量がある妊婦(+200μg/日)と授乳婦(+80μg/日)では、サプリメントでの摂取が必要である。所要量の設定にサプリメントからの摂取を考慮する必要に迫られている。

アルコール中毒、腎不全による血液透析者では特に葉酸欠乏に注意が必要である。また、葉酸は亜鉛と複合体を形成し、小腸からの亜鉛の吸収を抑制する可能性があるので、妊婦では特に多量摂取時には注意が肝要である。

7)ビタミンB12、パントテン酸、ビタミンC

ビタミンB12は動物性食品に含まれ、植物性食品には含まれない。ビタミンB12の吸収は高齢者では低下するので、高齢者や消化管切除者、厳格な菜食主義者では低下に注意する必要がある。アルコールの多飲によりパントテン酸の尿中排泄が増加し、しばしば脂肪肝を伴うことが多い。加齢に伴い血漿ビタミンC濃度の低下が認められることもあり、高齢者はビタミンCが不足しないように注意が必要である。

8.ビタミンの薬理的効果1、14〜17)

以下の効果が主なものとして知られているが、このほかにも多くの薬理的効果が報告されている。詳細は他の成書を参照されたい。

前述したように、β-カロテンの制癌作用に関してはいまだ結論は出ていないが、カロテノイドの癌予防への可能性を中心に研究が進められている。また、ビタミンDと高レベルカルシウムの摂取による結腸癌抑制の可能性、50〜100mg程度のRRR-α-トコフェロールの補給で、前立腺癌、大腸癌、口腔咽頭癌発症の危険率の減少と、虚血性心疾患の危険率の低下が報告されている。虚血性心疾患による死亡を減少させるためには、RRR-α-トコフェロール当量として30mg前後のビタミンEの摂取が必要とされ、所要量の引き上げが提案されている。ビタミンKの骨粗鬆症予防効果、ニコチン酸の血清コレステロールおよび中性脂肪低下作用、ビタミンB6の虫歯予防効果の可能性、ビタミンCによる薬物代謝活性および免疫能の増強作用、発癌抑制特に消化器癌の抑制作用、HDL-コレステロールを増加させてLDL-コレステロールを低下させる血清脂質の改善効果などが知られている。

9.薬物とビタミンとの相互作用

医療の現場においては、治療のために薬を用いることは必須である。しかも、治療を受ける対象は圧倒的に老人が多く、十分量の栄養素を摂取できにくい身体状況にある老人も多いので、非常にリスクの高いグループでもある。臨床の現場で使用される多くの薬物がビタミンやミネラルなどの栄養素の代謝に影響し、欠乏を起こさせる可能性のあるものも知られている。単に薬効に配慮するだけでなく、ビタミンやミネラルなどの栄養素の変化にも注意する必要がある。ここでは参考文献を紹介しておくにとどめたい13、14、18)

10.おわりに

健康に対する関心の高まりとともに、様々な情報を通してサプリメントに対する人々の関心が高まっており、また、多くの人がこれを利用している。一方で、日常的にバランスのとれた食生活を維持することが困難と思える人も増えている。こうした特殊な環境下でサプリメントを利用しなければならない人たちは、自らのライフスタイルを考え、また、自身の健康状態も考慮し、目的、種類と量、性質などを考慮して、適切に利用することが大切である。しかし、あくまでもバランスのとれた栄養摂取は食事からを基本にし、栄養補助食品に頼りすぎないこと。個人の食事から栄養素の過不足、所要量に対する充足率などを把握し、一時的に不足分を補う補給・補完程度の使用にとどめたい。
 医師からの栄養素摂取の指示は栄養素で出される。薬には選択の余地はないが、栄養素では食品をどの様な食事に料理して摂取しても構わない。多くの食品を組み合わせて彩り豊かな食事を作ることは食事の楽しみでもあり、薬を飲むのとは根本的に違う。食品素材が多くなればなるほど食品中の栄養成分が補い合って全体としてバランスがとれ、料理の種類も豊富になって食事の楽しみが増えるのである。

文 献

  1. 健康・栄養情報研究会:第六次改定日本人の栄養所要量, 食事摂取基準.第一出版, 1999
  2. 田中平三, 吉池信男, 松村康弘, 他:食事摂取基準(Dietary Reference Intake).臨床栄養 95: 262-266, 1999
  3. 玉井浩:脂溶性ビタミン.臨床栄養 95: 597-601, 1999
  4. 橋詰直孝:水溶性ビタミン.臨床栄養 95: 602-606, 1999
  5. 健康・栄養情報研究会:国民栄養の現状, 平成10年国民栄養調査結果.第一出版, 2000
  6. 平原文子, 富岡和久, 大谷八峯, 他:国民栄養調査成績から見た多価不飽和脂肪酸摂取量およびビタミンEに対する比に及ぼす生活環境要因の年次推移.ビタミン 68: 293-302, 1994
  7. 平原文子, 植田忠彦, 五十嵐脩, 他:モデル献立から分析法と計算法により求めた日本人の多価不飽和脂肪酸(PUFA)摂取量およびビタミンE/PUFA比.ビタミン 69: 25-32, 1995
  8. 原登久子, 美濃真:大阪府民の摂取ビタミンEと多価不飽和脂肪酸からみたビタミンE栄養の一考察.ビタミン 71: 475-479, 1997
  9. 原登久子, 美濃真:第二次世界大戦後50年間の大阪府民の脂肪摂取とビタミンE栄養状態の変遷−国民栄養調査成績より.ビタミン 72: 437-442, 1998
  10. 柴田圭子, 平岡真実, 安田和人:陰膳法による女子大学生のビタミンB6摂取量の検討−B6摂取状況と血清総B6濃度.ビタミン 73: 459-464, 1999
  11. 平岡真実, 安田和人:女子大学生のビタミンB12, 葉酸栄養状態について−血清総ビタミンB12, 葉酸濃度分布範囲.ビタミン 74: 271-278, 2000
  12. 渡辺敏明:地域住民におけるB群ビタミンの栄養摂取状態に関する検討.東北公衛 48: 15, 1999
  13. Flodin NW: Micronutrient supplements; toxicity and drug interactions. Prog Food Nutr Res 14: 277-331, 1990
  14. 日本ビタミン学会:ビタミンの事典.朝倉書店,1996
  15. 野入英世:動脈硬化とビタミン(1), ビタミンB6, ビタミンB12, 葉酸.臨床栄養 96: 126-131, 2000
  16. 福岡利仁, 副島昭典:動脈硬化性病変とビタミンC・E.臨床栄養 96: 132-136, 2000
  17. 太田樹, 奥田俊洋:骨代謝疾患とビタミン.臨床栄養 96: 137-144, 2000
  18. 堀美智子:栄養補助食品をどう活用するか?薬剤師の立場から.臨床栄養 97: 158-162, 2000


* 医学書院より、2年間(2005年5月まで)の掲載許可を得ています。


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