栄研スタッフによる解説論文集 作成日 2002/10/25

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体脂肪計

松村 康弘 (国立健康・栄養研究所 国際・産学共同研究センター長)


1.体脂肪測定の意義

近年はわが国でも肥満が問題となってきている。 かつて、昭和20年代は食糧不足などにより、低栄 養(やせ)の克服に神経をとがらせていた。しかし、 昭和30年以降経済復興が本格化するなかで、肥満 による弊害に目を向ける必要が生じてきた。肥満が なぜ問題かというと、肥満者に心疾患、動脈硬化、 高血圧、糖尿病等の生活習慣病が多く、死亡率が高 いという事実があるからである。

肥満は英語ではobesityあるいはadiposityと記 される(表1)。これらの語源からいえることは肥満 はたらふく食べた結果、身体に脂肪が過剰に蓄積さ れた状態だということである。これまでは、このよ うな考え方から、身長に見合ったより多い体重を示 すものを肥満者と考えることが通念としてあった。

表1 肥満の英語とその語源

英語語源意味
肥満obesity
adiposity
obesus(ラテン語)
adepus(ギリシア語)
たらふく食う(eat out)
脂肪

しかし、肥満の定義はこれのみでは不十分で、身 体への脂肪の蓄積が比較的軽度であったとしても、 その沈着の仕方、すなわち体脂肪分布に異常がある と、これによっても特定の疾病異常がもたらされる からである。したがって、肥満(obesity)とはた んに体重が多いこと(overweight)ではなく、体 脂肪が過剰に蓄積した状態のことをいう。肥満には それぞれの立場からいくつかの分類法がある。臨床 医学的には、(日)原発性肥満(単純性肥満)と(月)二次 性肥満(症候性肥満)、形態上からは(日)上半身(り んご型)肥満と(月)下半身(洋梨型)肥満、脂肪組織 の分布状態からは(日)内臓脂肪型肥満と(月)皮下脂肪型 肥満、脂肪細胞の見地からは(日)脂肪細胞増殖型肥満 と(月)脂肪細胞肥大型肥満とに分類される。

肥満の定義から明らかなように、身長の割には体 重が少ない人でも、体脂肪量(率)が多い人は肥満 者であり、身長と体重だけで判定すると、そのよう な「かくれ肥満」を見逃すことにもなりかねない。 したがって、肥満を測定するには体脂肪量(率)を測 定することが望まれるが、生きている人を直接的に 測定することはできないから、様々な間接的方法が 考えられ、それに応じた機器が開発されている。こ こではそれらを総称して体脂肪計と呼ぶことにす る。

一方、肥満だけが問題なのではなく、疫学的研究 によると体脂肪と死亡リスクとの間の関係はJ字型 の関係を示すことが指摘されており、やせでも過剰 のリスクを有することが明らかになっている。その 解釈として、単純性のやせというよりは、既往疾患 による2次性のやせが問題であるとしている。しか し、肥満にせよ、やせにせよ、体脂肪量の評価をき ちんとすることが重要であるのは言うまでもないこ とである。

2.体組成測定の考え方

体組成を計る上で、重要なことは、身体をどのよ うな成分に分けて計るかを明確にすることである。 たとえば、身体を骨とカルシウムに分けるなどとい うことはしないように、お互いに背反する成分での 構成を考えなければならない。

身体をいくつかの成分に分けて、各成分の構成比 率などを測定する体組成測定法を考える上で、 Wang らは原子レベル、分子レベル、細胞レベル、 組織レベル、身体まるごと(全身)レベルの5段階 モデル(図1、表2)を提唱している。身体成分を 測定する上で、この考え方は重要な意味をもってい るので以下に詳細を述べる。

表2 身体構成成分の5段階モデル
レベルI(原子レベル)酸素+炭素+水素+窒素+その他
レベルII(分子レベル)水分+脂質+たんぱく質+グリコーゲン+ミネラル+その他
レベルIII(細胞レベル)細胞量+細胞外液+細胞外固形物
レベルIV(組織レベル)骨格筋+脂肪組織+骨+血液+その他
レベルV(全身レベル)人体

(1)原子レベル(atomic level)

人体のもっとも基本的な構成はいうまでもなく原 子または元素である。自然界に存在する106種の元 素の内、約50種類の元素が人体から検出されてい る。この内、ヒトが健康で生命を維持していくには 11種類の常量元素(major element)と少なくとも9 種類の微量元素(trace element)または超微量元素 (ultratrace element)が必要である。ビタミンには 必須ビタミンが、アミノ酸には必須アミノ酸がある ように元素にも必須元素がある。生体の構造維持、 潤滑なエネルギー代謝、細胞の増殖、自己複製、種 族の維持などに不可欠な元素を必須元素(essential element)または生元素という。上記の少なくとも 20種がこれに相当する。

国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection, ICRP)が採用 している体重70kgの基準人(Reference Man)の 元素組成を表3に示した。1%以上存在する6種類 の元素、酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、お よびリンで全体の99.4%を占めるが、カルシウムと リンは組織局在性があり、その大部分が骨および歯 に存在する。

表3 ICRP元素組成

元素の測定は、伝統的に死体あるいは生検材料の 分析から求められてきたが、おもに中性子励起法 (neutron-activation techniques)を用いた各種分 析法によって、全身の生きた状態での分析が可能と なってきている。

(2)分子レベル(molecular level)

体脂肪はこの分子レベルでの測定であり、身体を 脂肪、水分、たん白質、ミネラル(骨ミネラルとそ の他のミネラル)などの2つ以上の成分に分けて考 える。脂肪量(Fat Mass,FM)と除脂肪量(Fat Free Mass,FFM)の2つに分ける場合を2成分モ デル(2-component model,2C Model)といい、 3つ以上に分ける場合を多成分モデル (Multicomponent model)という(図2)。

分子レベルでの主成分は、水、脂質、たんぱく質、 グリコーゲン、ミネラルであり、これら5つの成分 で体重の99%以上を占める。

水は人体内で最大の化学化合物であり、基準人の 体重の約60%を占めている(表4)。

表4 欧米及び日本における基準人の体組成

基準人
欧米人男*
基準人
日本人男**

(kg)(%)(kg)(%)
体重7010060100
脂肪13.519.31016.7
42603761.7
たんぱく質10.615.19.215.3
灰分3.75.33.25.3
*ICRP Reference Man, ICRP(1975)
**田中義一郎(1989)

たんぱく質は、身体構成成分の研究ではアミノ酸 から核たんぱく質(nucleoprotein)までの窒素を 含むすべての化合物をいう。たんぱく質は構成成分 の他に、栄養素の1つであり、酵素として生体内の あらゆる代謝に関与し、免疫応答や血液凝固に際し て中心的役割を果たしている。たんぱく質を加水分 解すると約20種類のアミノ酸となる。アミノ酸は 炭素、水素、酸素、窒素によって構成され、水素イ オン(H+)を与えることのできるカルボキシル基 (-COOH)と、H+を受けることのできるアミノ基 (-NH2)という2つの性質を持った基が1分子内に あり、ともに同じ炭素に結合している。システイン やメチオニンなどのように、側鎖に硫黄を含むもの を含硫アミノ酸という。たんぱく質の平均密度は 1.34g/cm3 とされている。

グリコーゲンは炭水化物の主な貯蔵形態であり、 ほとんどの細胞の細胞質に存在している。主に骨格 筋、肝臓に分布している。分子式は(C6H10O5)xとさ れ、密度は1.52g/cm3 である。

ミネラルはカルシウム、カリウム、ナトリウム、 マグネシウムなどの金属元素と酸素、リン、塩素な どの非金属元素からなる無機化合物である。灰分は ミネラルと同等で、500℃以上で生体試料を熱した ときの残りで、ミネラル化合物の非揮発性成分から なる。しかし、カルボキル基などの炭酸成分と結合 水が蒸発するので、灰分はミネラルより軽くなる。

ミネラルは骨内塩(osseous mineral)と骨外塩 (extraosseous mineral)の2 つに分類される。骨 塩の大部分は、カルシウム・ハイドロアパタイト (calcium hydroxyapatite)であり、カルシウムが 分子量の39.8%を占める。またカルシウム・ハイド ロアパタイトは、体内総カルシウム量の99%と、体 内総リン量の約86%を含んでいる。骨外塩には、お もにカリウム、ナトリウム、塩素が含まれる。

脂質(lipid)という用語と脂肪(fat)という用語 はよく混同されて用いられる。古くからの定義によ れば、脂質は、水に溶解せず、エーテル、ベンゼン、 クロロホルムなどの有機溶媒に溶解する化学化合物 の集合のことをいう。人体内では約50種類の脂質 が見つかっているが、それらは、表5のように分類 される。

表5 脂質の分類
単純脂質脂肪酸とアルコールのエステル (1)トリアシルグリセロール;脂肪酸とグリセリンのエステル
(2)ろう(蝋);脂肪酸と脂肪族1価高級アルコールとのエス
複合脂質脂肪酸とアルコールのほか、他物質と結合す (1)リン脂質;脂肪酸・グリセリン・リン酸・有機塩基
(2)糖脂質;脂肪酸・糖および窒素化合物からなる
誘導脂質上記脂質から加水分解などで誘導されるもの (1)脂肪酸
(2)グリセリン・ステロイド・高級アルコールなど
(3)カロチノイド・スクアレンなどの炭化水素およびその誘

脂肪はトリグリセライド(triglyceride)と同義 語で、厳密に言えば、脂肪は総脂質の内のサブカテ ゴリーである。体成分モデルを構成する上で誤解が 生じるのは、この脂質と脂肪を混同することによる ことが多いのである。成人においては、総脂質の約 90%が脂肪である。

脂質は生理学的にはさらに必須脂質(essential lipids)と非必須脂質(nonessential lipids)の2つ に分類される。リン脂質などの必須脂質は、細胞膜 の形成などに重要な役割を担っている。非必須脂質 の大部分はトリグリセライドで、熱の絶縁体あるい は代謝熱量を貯蔵する役割がある。

体脂肪測定といった場合、総脂質の約90%を占め る脂肪を測定することになる。そのほとんどはトリ グリセライドの形で存在するが、トリグリセライド はグリセロールに3つの脂肪酸が結合した化合物に よって異なるが、一般にその分子式はC51H98O6と され、平均密度は0.900g/cm3である。

(3)細胞レベル(cellular level)

細胞レベルでは、身体構成成分は細胞(cell mass)、細胞外液(extracellular fluid: ECF)、細 胞外固形物(extracellular solids: ECS)の3 つに 分けられる。成人では約1018個の細胞からなり、代 謝、成長、生殖などの生存にかかわる重要な機能を 営んでいる。また、機能面から筋、神経、上皮およ び結合組織細胞にわけることもできる。なお、ECF の体積の約94%は水分である。

(4)組織レベル(Tissue-System)

体組成の観点からは、筋肉、脂肪組織、骨、血液 などが重要で、体重の約75%を占める。一般に器官 (臓器)は2つ以上の組織から構成される。皮膚、内 臓などがそのほかに入る。

(5)全身レベル(whole body level)

全身レベルには表6に示したような測定の次元が ある。

表6 全身レベルの測定の次元

身体成分の測定法には直接法と間接法があり、両 者の関係を上述の5つの段階別に整理すると表7の ようになる。

表7 5−レベルモデル分類

3.体脂肪測定法

(1)体脂肪量の測定

生きている人間の体組成を直接的に調べる方法は ないことから、体脂肪量も直接測定することはでき ない。解剖死体および組織分析のみが唯一の方法で ある。したがって、生きている人間の体脂肪量の測 定は間接的方法を用いざるをえない。19世紀後半 から人体計測学が導入されてから、さまざまな体組 成測定法が開発されてきたが、1942年には Behnke、Feen、Welhamによって水中体重秤量法 による体密度測定法が、初期の体組成研究の主な方 法として確立された。続いて、アイソトープ希釈法 が用いられるようになり、その後体組成の研究が大 きく進歩し、体脂肪測定に関しても種々の方法・機 器が開発されてきている。これらの測定法には密度 法、アイソトープ希釈法、DXA法、カリウム法、ク レアチニン法、インピーダンス法、TOBEC法、皮 下脂肪厚法、CT法、MRI法などがある。以下に体 脂肪量測定の具体的方法を述べる。

1)全身的測定による方法

(日)密度法(Densitmetry)

身体をいくつかの成分に分けて、各成分の構成比 率などを測定する体組成測定法を考える上で、前述 したようにWangらは原子レベル、分子レベル、細 胞レベル、組織レベル、全身レベルの5つの段階を 提唱している。体脂肪はその内の分子レベルでの測 定であり、身体を脂肪、水分、たん白質、ミネラル (骨ミネラルとその他のミネラル)などの2 つ以上 の成分に分けて考える。脂肪量(Fat Mass,FM)と 除脂肪量(Fat Free Mass,FFM)の2つに分ける 場合を2成分モデル(2-component model,2C Model)といい、3つ以上に分ける場合を多成分モ デル(Multicomponent model)という。なお、こ れらのモデルでは除脂肪量はFat Free Mass (FFM)をさす。FFM と同じ意味でLean Body Mass(LBM)という語を使っているのをよくみか けるが、両者の立場の違いは、細胞膜などを構成し ているリン脂質などの必須脂質(Essential Lipid) を含むか、含まないかによる。ここでは、FFMには 必須脂質を含まず、LBM には必須脂質を含むもの とし、両者は異なるという立場をとる。

密度法は、上述のモデルにおいて、各成分の密度 が既知で一部の成分の構成比率が一定であると仮定 して、体重と身体全体の密度を測定することにより 体脂肪量(率)を推定する方法である。

a. 水中体重法(Underwater weighing method)

脂肪量(FM)と除脂肪量(FFM)の密度はそれ ぞれ一定であるという仮定のもとに(Brozek の データではFM:0.9007g/ml、FFM:1.1000g/ml)、 体密度からFM とFFM の占める比率を推定するこ とができる。

すなわち、体重Wkgの人の体密度がDbであり、 FMとFFMの密度がそれぞれDFM、DFFM、体積がそ れぞれVFM、VFFM であったとすると、
 FM=DFM×VFM
 FFM=DFFM×VFFM
 FM+FFM=W
VFM+VFFM=W/Db
であるから、
 DFM×VFM+DFFM×VFFM=W
 DFM×VFM+DFFM×(W/Db−VFM)=W
この式の内、DFM、DFFMは既知であり、W、Dbは測 定によって与えられるから、VFMが求まり、その結 果として脂肪量(FM)を求めることができる。

体密度は体重と体容積から算出されるから、体密 度法は結局は体容積を測定する方法に帰着する。こ れまでは2成分モデルにおけるスタンダードな方法 として、水中体重法(Underwater weighing method)が用いられてきている。

水中体重法はアルキメデスの原理を応用した方法 であり、体重と水中での体重との差が体容積に相当 する水量の浮力を受けたものとして体容積を推定す るものである。ただし、その際には肺の中の残気量 および腸間ガス量で補正する必要がある。残気量の 測定方法には酸素再呼吸法(oxygen rebreathing)、水素再呼吸法(hydrogen rebreathing)、窒素ウォッシュアウト法、ヘリウム 希釈法などがある。残気量の測定ができない場合 は、その推定式(男子:肺活量×0.24、女子:肺活 量×0.28)を用いることも可能ではあるが、その推 定誤差はそれほど小さくないことが報告されてい る。腸間ガス量に関しては、通常直接的に測定すこ とはなく100mlと仮定することが多い。この仮定を 有効にするためには、できる限り排便・排尿後に水 中体重測定を行うことが望ましい。

水中体重法による体密度Dbは以下の式によって 算出される。

 体重
Db= ──────────────────
 体重−水中体重
 ────────−残気量−100ml
 測定時の水温で
 の水の密度  

水中体重法で体密度を求めるまでに測定すべき項 目と必要な機器は表8,図3-1に示したようになる。  水中体重の測定の手順および注意点を表9に、残 気量の測定手順および注意点を表10に示した(図 3-2 も参照)。

表8 水中体重法にて測定する項目及び必要物品
測定すべき項目必要機器等
身長身長計
体重体重計(最低50gの精度が必要)
水着重量
水温温度計
気圧気圧計
水中体重水中体重計・水槽・温水給湯設備
残気量使用ガス・麻酔バッグ・ノーズクリップ・ガス分析器

表9 水中体重の測定の手順および注意点

表10 残気量の測定手順および注意点

体密度から%fat を推定するのによく使われてい るのは、Siriの式(%fat=[4.95/ 体密度−4.50] ×100)とBrozekの式(%fat=[4.570/体密度− 4.142]× 100)である。体密度が1.03000 から 1.09000g/mlであれば、この2つの式による%fat の推定値はほぼ同じような値となる。たとえば、体 密度1.0500であれば、Siriの式とBrozekの式によ る推定値はそれぞれ21.4% と21.0% となる。

b. 六弗化硫黄希釈法(Sulfur hexafluoride dilution techniqui)

水中体重法は身体体積と体重から体密度を求め、 体脂肪率を推定する方法である。しかし、この方法 では被検者が息を吐ききったあと数秒間潜水しなけ ればならず、被検者によっては負担が大きく、全て の人に適応できない。これに対して、同じ密度法と して、六弗化硫黄希釈法(Sulfur hexafluoride dilution techniqui)がわが国で、空気置換法(Air displacement method)が米国で開発された。

六弗化硫黄希釈法では(図4)、容積V0のチャン バー内に体容積Vの被験者を入れ、密閉した状態で 不活性ガスである六弗化硫黄をV1だけ注入し、十 分に攪拌する。不活性ガスの量は変わらないので攪 拌後の濃度をCとすると、V1=(V0−V+V1)C である。したがって、V=V0+V1−V1/C として 被験者の体容積を求め、体密度を算出する。ただし、 体密度Dbを算出する際には、腸内ガス量を0.1lと して補正し、  Db=W/(V-0.1)  (W:体重(kg)) とする。体密度が求まれば、あとは水中体重法と同 様、体密度から体脂肪率を推定する式によって体脂 肪率を算出する。

用いる六弗化硫黄ガスは不活性ガスできわめて安 定しており、人体には無害であるとされている。被 検者はチャンバー内でじっとしているだけでよく、 測定時間は約5分であり、水中体重法より被検者の 負担は軽い。測定者にとっても高度な技術と熟練を 要さない。したがって、適用範囲も水中体重法より 広いが、体積測定可能範囲が40〜90に限定され ている。また、被検者は水中体重法と同様、裸体か できるだけ薄い水着着用の状態で測定しなければな らない。

機器の設置場所は、気流の変化のほとんどない場 所でなくてはならず、機器に風が当たるような場所 は適当ではない。使用環境温度は15〜28℃である。 また、1人の測定後にチャンバー内のガスを強制排 出させるための排気設備が必要となる。したがっ て、当該機器は移動性はほとんどなく、人の出入り が多くなく、ある程度の空間をもつ部屋に設置する 必要がある。

当該方法での測定手順を図5に示しておいた。

c. 空気置換法(Air displacement method)

空気置換法では、密閉された一定の容積のチャン バー内に被検者が入り、理想気体の状態式(ボイル・ シャルルの法則)を用いて体容積を測定するもので ある(図6)。この方法では残気量の補正を行う必 要があり、チャンバー内に残気量測定のための チューブを導入し、パフを行うことによって残気量 推定を行うようになっている(図7,)。

この方法でも被検者はチャンバー内でじっとして いるだけでよく、測定時間は約3分で、水中体重法 より被検者の負担は軽い(図9)。測定者にとって も高度な技術と熟練を要さない。したがって、適用 範囲も水中体重法より広いが、測定できる体積は 40 〜175に限定されている。当該機器も、その 精密性および重量から、据え置いて測定するもので あり、移動可能性は少ない。

d. 体密度から体脂肪率を推定する式

六弗化硫黄希釈法も空気置換法でも体容積を求め た後の体脂肪率(%fat)の推定は水中体重法と同様 2 成分モデル(2 component model)を用いた推 定式で行うようにプログラム化されている。

Brozek やSiri の2成分モデルでは、.脂肪量 (FM)の密度も除脂肪量(FFM)の密度も一定であ る、.FFMを構成する組織の密度は身体どの部分 でも一定であり、各構成成分割合は一定である、. 基本とした身体と異なるのはFMだけである、.基 本とした身体のFFMの構成は、水:73.8%、たん白 。 質:19.4%、ミネラル:6.8%であることを前提とし ている(表11)。

表11 脂肪量と除脂肪量に関する仮定値

しかし、除脂肪中の3要素の構成割合は、年齢 (成熟や老化)、性別、人種、身体運動状況など様々 な要因によって変動することから、除脂肪密度も一 定ではなく、変動することが明らかになっている。 それに対して、近年になって、全身の骨ミネラルを 測定する方法(DPA法やDXA法)が開発され、除 脂肪組織中の骨ミネラル含有率の変動を考慮するこ とができるようになってきた。また、体水分量測定 も合わせることにより、身体を脂肪、水分、たん白 質、ミネラルといった2つ以上の要素に分類し、除 脂肪組織中のミネラルや体水分の構成割合の変動を 考慮して体脂肪率を推定することが可能となった。 身体を3つ以上の成分に分割するのを、多成分モデ ル(Multicomponent model)といい、特に4成分 モデル(4-component model)の体脂肪率推定式 が多く考案されている(表12)。多成分モデルをも とに除脂肪量の密度を算出し、各対象集団別に2成 分モデルの形式にした体脂肪率の推定式もいくつか 考えられている(表13)。

表12 各コンポーネント・モデルにおける体脂肪率推定式


表13 (Db)からの体脂肪率推定式

4成分モデルには化学的構成によるものや解剖学 的構成によるものなどがあるが、化学的構成による モデルに関する体脂肪率推定式が多く考案されてい る。化学的構成による4成分モデルは前述のように FFMをさらに水分、たん白質、ミネラルという3つ の成分に分けたものであり、それぞれの占める量や 割合を測定することにより、2成分モデルよりもさ らに精度のよい推定を行おうというものである。

(月)インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analysis Method、BIA 法)

インピーダンス法は、簡便、迅速、非進襲的に測 定でき、小型で持ち運び可能であるため、臨床栄養 学分野でも注目されている方法である。

BIA 法の基礎的原理は1960年代前半に確立され た。低レベルの電流が人体を流れた際、そのイン ピーダンスを測定することによって、体内の水分量 を推定するというものである。体内の水分は良い伝 導体であるから、体水分量が多いと電流が流れやす く、電気抵抗が小さくなる。一方、体脂肪には水分 含量が少ないことから、体脂肪組織での伝導性は悪 く、体脂肪の多い人の電気抵抗は大きくなる。そし て、除脂肪量の水分含量は多い(約73%が水分)こ とから、除脂肪量は体内の全水分量から推定できる というものである。すなわち、除脂肪量が多く水分 の多い人は、除脂肪量が少ない人より、電気抵抗が 小さくなるのである。

このように、BIA法によって体内水分量を正確に 計測することを目的に研究が進められていたが、さ らに、この体内水分量から除脂肪量や体脂肪量(率) を推定することができることが示され、BIA法によ る体脂肪率の測定へと進んできたのである。

BIA法は体幹部の軟部組織などのような部分的な 測定が可能であり、さらに、多周波数BIA法を用い ることによって、細胞外液と細胞内液の弁別ができ る可能性を秘めている。

BIA法による除脂肪量(FFM)や体水分量(TBW) の測定は、その他の方法と同様、推定によるもので あり、BIA法では直接的には生体インピーダンスを 計測しているにすぎない。したがって、FFMやTBW を推定するために、以下の2つの仮定をおいてい る。

i)人体は長さおよび断面積が一定の完全な1つの円 柱である。

この仮定はやや強引な仮定であり、図10 に示し たように、人体は少なくとも5つの円柱(2本の腕、 2本の脚、1つの体幹部、頭部は除く)から成る。 また、各部位の長さや断面積は一定でないから、各 部位を流れる電流に対する抵抗は異なる。

ii)人体が完全な円柱であるとすると、体内に定周波 数の電流を流したとき、そのインピーダンス(Z)は 伝導体の長さ(L)(人の場合身長に相当する)に比 例し、断面積(A)に反比例するから、Z=ρ(L/A) と表すことができる(図11)。

この式の両辺にL/Lをかけてやると
 Z= ρ(L2)/AL
となる。ここでALは円柱の体積(V)を表すから、
 V= ρ(L2)/Z
となる。したがって、除脂肪量の体積はL2(人では 身長2)に比例し、インピーダンス(Z)と反比例す ることになる。
 V= ρ(H2)/Z

しかし、人間の体はこれほど単純ではなく、複雑 な幾何学形態を呈している。また、固有抵抗も一定 ではなく、体の部位によって異なる。体幹部の固有 抵抗は、腕や脚の2〜3倍であることが報告されて いる。

このように、仮定は現実とはやや異なるが、その 仮定のもとに、ある周波数の弱い電流を人体に流し た時、脂肪は水分をほとんど含まず、電流を通し難 いことから、生体インピーダンスは除脂肪量の体積 を反映したものとなる。その時のインピーダンス (Z)は生体電気抵抗(R)と誘導抵抗(Xc)の幾何 平均(R2+Xc21/2 であることを応用して(図11)、 除脂肪量の推定を行っているのである。

BIA法による除脂肪量の推定式は、各人間集団の 測定値をもとに作成されている。すなわち、年齢階 級、人種、性、身体活動レベル、体脂肪量レベル別 に推定式が考案されている。したがって、現在のと ころどんな人にも適応できる推定式はなく、被検者 の特性にあった推定式を用いる必要がある。たとえ ば、若い人(18〜30歳)向けに考案された推定式 では、高齢者(60〜83歳)の除脂肪量を系統的に 過大評価する傾向があるのである。これは、H2/R と除脂肪量(FFM)との関係が年齢によって異なる ことを示している。

このようなサブグループの特性を考慮する他に、 体重を推定式の中に含めることによって、除脂肪量 の推定精度の向上がみられるようになった(表 14)。したがって、現在のBIA法では、身長、体重 は必須測定項目となっている。現在市販されている BIA法による体脂肪計には、それぞれの推定式がそ の回路の中に組み込まれており、インピーダンスを 測定するとともに、それらの推定式による体脂肪率 が求められるようになっている。

表14 年齢階級、人種、性、身体活動レベル、体脂肪量レベル別推定式

BIA 法による体脂肪計は、4電極法を基にして、 手、手首、足、足首に電極を装着するタイプが最初 に開発された。わが国でも、独自にこれらの機器が 開発され、機器によっては、それまでと同様に電極 を手と足につけて仰向けになった状態で測る方式、 体重計と一体になっていて、はだしで立って測る方 式、ハンドルを手でにぎり、腕をまっすぐ水平に伸 ばして測る方式がある。それぞれの方式では、電流 が体の中を流れる経路が異なり、それぞれ独自の体 脂肪率の推定式が組み込まれている。

BIA法による測定は、その推定式からもわかるよ うに、生体インピーダンスを計測する前に、身長、 体重の計測を厳密に行う必要がある。

臥位式(図12)での測定では、被検者は利き手側 の足首と手首を出し、仰向けに寝る(図13)。その 時、上肢と体幹の間および両下肢間が密着しないよ うにする。測定部位の皮膚をアルコールでよく拭い て、皮膚電極における抵抗の増大がないようにする (抵抗が大きいと、体脂肪率が多めに推定される)。 体温、体表の発汗などによる誤差がないようにする ため、測定場所の室温を発汗しないような温度に維 持する。寝転がる場所は、帯電しないような素材の マットや布団の上が望ましい。電極を正確にきちん と装着することが重要であるので、よく確認を行う ようにする。機器に身長、体重、年齢、性別などを 入力した後、測定をスタートさせると、内蔵コン ピュータにより、インピーダンス計測、体脂肪率算 出などの処理が行われ、結果が表示される。

体重計一体式(図14)での測定では、被検者は素 足になり、足底をアルコールを含ませた綿や布でよ く拭き、よく乾かす。また、測定器の電極部分もア ルコールで拭きよく乾かす。靴下やストッキングを 穿いたままでも測定可能となる場合はあるが、その 測定値は素足の場合とは異なるので、必ず素足にな る。また、水虫などの感染を防止する上でも、足裏 と電極部をアルコールで拭くことが大事である。そ の間、測定者は測定器のコントロール器で被験者の 身長、年齢、性別などを入力する。用意ができれば、 被検者は所定の場所に立っているだけ(図15)で、 内蔵コンピュータの処理により、結果が表示され る。

手持ち式(図16)での測定では、被検者はまず手 のひらをアルコールで清拭する。また、測定器のグ リップ電極部もアルコールで清拭する。手のひら、 電極が十分に乾いたら、足を少し開いて立ち、測定 器のグリップ電極を握る。その際、まず中指をグ リップ電極のくぼみ部分にひっかけ、親指と人差し 指で上側の電極をしっかり握り、続いて薬指と小指 を下側の電極にひっかけ、手のひらを電極にぴった り押しつける。ひじをまっすぐ伸ばし、腕を正面に 突き出す(腕と体幹との角度が90度になるように する)(図17)。機器のパネルを操作して、身長、体 重、年齢、性別を入力して確定スイッチを押すと、 測定モードとなり、数秒後に結果が表示パネルに示 される。

BIA法の問題点は、インピーダンスのみが真の値 であり、直接人体構成成分を測定していないこと、 円柱という単純な幾何学的伝導体に適応される原理 を、複雑な形態をもち、水分分布が均一かつ単一で ない人体に応用していることである。

BIA法での計測の誤差要因には、機器の種類、被 検者要因、測定環境要因、推定式の要因などがある。

BIA法による体脂肪率の値は体水分量の影響を受 るので、運動や飲食の直後、サウナや入浴の直後の 測定は避けた方がよい。また、成長期の児童、高齢 者、閉経以降の女性、スポーツを職業にしている人、 妊娠中の人、人工透析患者、むくみのある人、骨の 密度が非常に低い骨粗鬆症患者、風邪などで発熱中 の人などの測定値は大きくバラツク可能性がある。 また、電流によってペースメーカーの誤作動を起こ す可能性があるので、メースメーカー使用者への適 応は避けなければならない。1日の内、身体が安定 している時間帯(昼食後2時間以上たった午後、夕 食前や夕食後2時間以上たった就寝前など)の、で きるだけ同じ時刻に測定をすることが変化をみるた めには望ましい。

(火)二重X線法(dualenergy X-ray absorptiometry; DXA法)

DXA法(デクサ法あるいはデキサ法と読む)(図 18)は比較的新しい方法ではあるが、体組成研究に おける標準的方法となることが期待されている。本 法の略語として、DXAの他にDEXA、DRA、QDR、 DER、DEPRなどがあるが、WilsonらはDXAに統 一することを提案し、現在ではDXAの略語が広く 用いられるようになった。この方法では、骨ミネラ ル、脂肪および軟部組織の測定ができる。DXA に よる測定は信頼性が高く、水中体重法による体脂肪 率との一致の度合いも高い。DXA による測定は安 全で、速く(全身スキャンに要する時間は5〜30分 程度)、被検者の負担も少なく、骨ミネラルの個人 差を考慮できる。多成分モデルでの体脂肪量推定が できることから、水中体重法に替わって、体脂肪測 定のスタンダードな方法と考えられつつある。将来 的には、DXA 法を妥当性基準として、各種の体脂 肪推定式が開発されると考えられるが、その前に、 DXA 法が最良の基準法であるために、さらに検討 が必要なことも事実である。

DXA法では2種類のエネルギー(DXA法の機器 メーカーによってそれぞれのエネルギー量は異な る)のX線を人体に照射した際のX線の減衰係数か ら、脂肪量、骨塩量、それ以外の軟部組織重量の3 つを求める方法である。したがって、全身をスキャ ンする測定に際してはX線の被爆を受けるが、その 線量は0.05 シーベルト〜0.15 シーベルト(機 器の種類やスキャンするスピードによって異なる) であり、胸部X線の0.1〜6%程度であるので、全 年齢層の人に適用可能である。しかし、それでも妊 婦への適用は避けるべきで、測定前には妊娠の有無 をチェックする必要があろう。

機器の大きさの制約から、スキャンできる範囲が 限られており、あまりに大きな人(身長193cm 以 上、幅65cm 以上)の測定には無理がある。また、 厚みの大きい人(前後の厚みが20cmを越える)は、 X線の減衰が大きくなりすぎて、測定精度が悪くな る。また、機種(メーカー)によって、X線の減衰 程度から体脂肪を推定する際の仮定が異なってお り、それぞれの推定式も異なっている。各メーカー では推定式も含めた、ソフトウェアの改訂を数回に わたって行っているが、現在のところ同一メーカー の機器間でしか比較可能性は保証されない。

DXA 法による測定では、コントロールパネル部 が移動しながら被検者の全身をスキャンするだけな ので、被検者は機器のスキャン用台に仰向けに横た わっているだけでよい。ただし、被検者はその間 じっとしていなくてはならない。

(水)その他の方法

その他の方法として、アイソトープ希釈法、体内 カリウム法、クレアチニン法、TOBEC法などがあ るが、それらは装置が大がかりであったり、測定に 時間がかかったりするため、経済性、簡便性にやや 難があるので、以下に簡単に述べることとする。

a.アイソトープ希釈法(isotope dilution)

この方法はBIA法と同様、元来体水分量(Total Body Water: 以下TBW)を測定する目的で考案さ れた方法である。

まず体液全体に十分均一に分布し、体内で代謝さ れず、無害で、測定しやすい特定の標識物質(トレー サー)の既知量(Q)を体内に投与する。次にトレー サーが体内に均一に分布して希釈されたあと、その 体液の一部を採取してそのトレーサーの濃度(C)を 測定し、その分布容積Q/C で求めるものである。 TBW を測定するトレーサーとしては、わが国では 重水(D2O)がよく用いられることから、重水希釈 法として知られている。

D2O希釈法では、D2O(99.8%)を体重1kgにつ き1gの割合を飲料水によって20%以下に希釈した ものを経口投与する。経口投与後は、飲食・飲水を 禁止し、発汗などを避けるため比較的安静を維持さ せる。投与後1時間間隔で3回採尿する。採取した サンプルは蒸留装置を用い100℃で約20 分間熱蒸 留し、D2O濃度を赤外分光光度計やガスクロマトグ ラフィーなどの方法で測定する。

測定したD2O濃度(%D2O)と投与量(g D2O given)から体水分量(TBW)は次式によって求め られる。
TBW =g D2O given /% D2O×10

除脂肪量中に占める水分量の割合が一定と (72.0% あるいは73.2%)仮定すると、脂肪量には 水分がふくまれないことから、D2O希釈法によって 求められたTBW(l)を用いて、
FFM(kg)=TBW(l)/ 0.732(or 0.720)
の式で求められる。したがって、体脂肪率は
 %fat =100 −TBW /(0.732 ×BW)
※BW:体重(kg)
で求めることができる。

b.体内カリウム測定法

この方法は、体内のカリウムが活性組織のみに含 まれ、脂肪組織には含まれないことを応用し、次の ようにして体脂肪量を算出する。すなわち、活性組 織に含まれるカリウム量は一定で1kgにつき2.66g 含まれている。天然のカリウムの中にはγ線という 放射能をもったカリウム(K40)があり、K40はカリ ウム中の0.012%を占めるので、ヒューマンカウン ターという大がかりな装置を使用し一定時間K40を 測定し、これを0.00012で割れば体内にある全カリ ウム量が算出できる。このカリウム量をさらに 2.66gで割ると活性組織量が算出でき、これを体重 から差し引くことによって体脂肪量を求めることが できる。

c.クレアチニン法

クレアチニン法は、カリウム法によって推定され た除脂肪量と24 時間尿中クレアチニン(Cr)量と の間に高い相関関係があることを利用して、連続3 日間の24 時間蓄尿を行い、FFM(kg)=7.38 + 0.02908Cr(mg/日)の式でFFMを求める。

d.TOBEC(Total Body Electrical Conductivity)法

TOBECは身体を円筒状のコイルに挿入すること により人体の導電率(Electrical Conductivity)を 測定する方法である。コイル独自のインピーダンス とコイルに身体を挿入したときのインピーダンスの 差から、身体の電気の流れやすさ、導電率を知るこ とができる。脂肪に比べて除脂肪組織での導電率が よいことから、推定式を用いて体脂肪率を算出す る。

本法は測定時間が短く、安全で、簡単で無進襲で あるが、装置自体が高価である。また、水分や電解 質分布が不均一の時は誤差が大きくなり、正確に測 定できない。

2) 局所的測定から推定する方法

体の一部を測定する局所的測定から体脂肪を推定 する方法には、皮下脂肪厚法、超音波法、近赤外線 法、CT 法、MRI 法などがある。

(日)皮下脂肪厚法(キャリパー法)

皮下脂肪厚の測定方法には皮脂厚計、超音波皮脂 厚計、近赤外分光計、CT法などがあるが、一般に 皮下脂肪厚はキャリパーで測定される。

キャリパーによる皮脂厚の測定は間接的なもので ある。皮膚と皮下脂肪組織をつまみあげて、2重に なった厚みを計測するため、直接的な皮下脂肪厚の 測定とはいえない。したがって、つまみ方によって は、めざすものを測れないことになるので、測定に はある程度の熟練を要する。

皮下脂肪の測定は、1900 年代はじめ頃からおこ なわれていたようであるが、その後、1950 年代に なって、皮下脂肪厚から体密度を計算し、体脂肪を 推定する研究が始まった。皮下脂肪厚と体密度には 高い相関関係(0.85 〜0.87)があることを利用し て、体の数カ所の皮下脂肪厚から体密度を推定する 式が数多く開発されている。

キャリパーのデザインや測定精度に関する研究 は、1955年にEdwards, DAWらが報告したことに 始まる。それ以後、各種のキャリパーが開発され、 現在では高品質の金属素材を用いたものや、プラス チック製のものまでさまざまなものがある(図 19)。それらの値段も素材や精度によって幅がある。 Harpenden、Lange、Holtain、Lafayetteなどの ように高品質なキャリパーでは、皮脂厚を挟む力が 10g/mm2に安定するようになっている。わが国で は栄研式キャリパー(図20)が広く用いられてお り、国民栄養調査などでも栄研式が用いられてい る。栄研式もキャリパーの接点の圧は10g/mm2 (国際規定圧)になるように作られている。

測定に際しては、接点の圧が規定に合うように調 整(キャリブレーション)しておかなくてはならな い。圧が規定より低い(8g/mm2以下)と皮下脂肪 厚が多めに測定(過大評価)され、圧が規定より高 い(12g/mm2以上)と皮下脂肪厚が少なめに測定 (過小評価)される。また、圧が高すぎる(15g/mm2 以上など)と被検者に痛みなどの不快感を与える可 能性があるので十分注意を払う必要がある。

キャリパーで測定する部位は目的によって異なる が、図21に示したように部位が測定されている。体 密度推定のためには、計測しやすく、体密度との相 関が高い理由で、上腕背部(triceps)と肩甲骨下部 (subscapular)の2ヶ所が多く測定される(図22, 23,24)。測定は原則的には立位で行うが、部位に よっては(下腿など)椅子に座った状態で行う。諸 外国では、数カ所の部位を測定することによって、 より精度の高い体密度推定式なども開発されてい る。

測定部位が決まったら、各部位の測定点から約 1cmはなれた皮下脂肪組織(上腕背部、肩甲骨下部 の場合、測定点上方1cmのところ)を親指と人差し 指でつかみ、皮下脂肪組織の下にある筋をつままな いように軽くゆすぶる。測定点をキャリパーではさ み、キャリパーの目盛りが安定するまで2 〜 3 秒 まって値を読む。

キャリパーによる測定誤差の要因には、i)測定位 置、皮膚の引っぱり方が測定者によって異なる、ii) 皮脂厚測定では皮膚の厚さを考慮していない、iii)皮 下脂肪と筋肉組織の境界が明確でない場合がある、 iv)キャリパーの種類によって測定値が異なる、v)著 しい肥満では皮下脂肪をつまみ上げることが不可能 であるなどがある。キャリパーによる測定では、測 定者の訓練が必要であるが、それでもなお測定者間 誤差が大きい場合がある。したがって、同一被検者 に対しては、同一測定者によって、同一のキャリ パーで測定することが望ましい。

キャリパーで測定した皮脂厚から体密度を推定す る式はいくつか開発されているが、日本人の場合、 長嶺らによる式がよく用いられる(表15)。体密度 が得られたら、前述のBrozekやSiriの式によって 体脂肪率を算出することができる。
表15 日本人の体密度推定式
年齢
9〜11D =1.0879-0.00151 XD=1.0794-0.00142 X
12〜14D =1.0868-0.00133 XD=1.0888-0.00153 X
15〜18D =1.0977-0.00146 XD=1.0931-0.00160 X
18以上D =1.0913-0.00116 XD=1.0897-0.00133 X
X=上腕背側部皮脂厚(mm)+肩甲骨下部皮脂厚(mm), %Fat=(4.570/D-4.142)×100
(長嶺, 1972)

(月)超音波法

超音波法は、超音波が密度の異なる組織境界面で 反射する性質を利用したもので、各組織の横断面積 や厚さを測定することができる。超音波の反射波の 表示法としては、反射の強さを波形(Amplitude: 振幅)として表すAモード法、および反射の強さを 明るさ(Brightness:輝度)で表し、強い反射ほど 明るく表示されるBモード法の2方法が用いられて いる。Bモード法は、医療用の断層像として用いら れ、画像を確認しながらの測定が可能なため、測定 精度はAモードより高いとされている。また、超音 波による測定で、組織の境界を識別する能力を決め る発振周波数は、5MHz、または7.5MHzが多く用 いられている。超音波の測定精度について湯浅らは ヒトの屍体で実測した皮下脂肪厚とBモード法によ る皮下脂肪厚とはγ= 0.97 という高い有意な相関 があると報告している。

超音波法はCT法やレントゲン法と異なり人体に 対して無害であり、経済性や測定の簡便性という点 で優れている。また、従来、不可能であった体幹部 の測定も可能なため、人体の皮下脂肪厚の分布の測 定が行われている。

(火)近赤外分光法

上腕二頭筋中央部の1点に照射した近赤外線の光 吸収スペクトルをもとに体脂肪率を求める装置であ る(図25)。

現在、わが国で利用されている機器は、米国 Futrex社の製造によるBFT-2000である。小児用 のものも開発されている。測定に際しては、身長、 体重、性別、運動のレベルなどの必要事項を入力し た後、近赤外線を発するセンサーを利き腕の二頭筋 に押し当て、スイッチを押す方式になっている(図 26)。

DXA 法を基準として、わが国で妥当性を検討し た結果では、両者の体脂肪率間の相関係数は高かっ たが、回帰式の切片の値が大きく、回帰係数も1か ら離れていた。すなわち、本法では被検者の体脂肪 率が少ない場合は過大評価、体脂肪率が多い場合は 過小評価となる傾向がみられている。これは、本機 器が内蔵している体脂肪推定式を開発する際の基準 とした対象集団の特性が現れていると考えられ、さ らに対象を広げた体脂肪率推定式の検討が必要であ ろう。

(水)CT(Computed Tomography)法

コンピュータ断層撮影(CT)は一定の小単位容積 あたりのX線吸収を正確に測定し、その平均値に対 応して濃淡をつくることによりCT画像を構成する 方法である。CT 法では皮下脂肪、筋、骨の各組織 の境界を明確に識別できるため、各組織の厚みおよ び横断面積を定量化することができる。CT 法によ る全身の皮下脂肪容量の推定には全身を11 個の円 柱と仮定し、各部の断層像によって得られる脂肪断 面積と各部の長さを乗じることにより求める方法が ある。

(木)MRI(Magnetic resonance imaging)法

MRI法は核磁気共鳴を利用して組織を画像化する 方法であり、CT法と同じく体肢だけではなく体幹 部の断層画像の撮影が可能である。人体への有害性 は報告されていないが、測定装置そのものが大がか りであり、装置の操作も含めて一般化という点では 問題を残している。 大腿周囲長(上部) 大腿周囲長(中部)

(2) 体脂肪分布の測定法

肥満はその形態を視覚的にとらえると、皮下脂肪 の蓄積状況から上半身(りんご型)肥満と下半身(洋 梨)型肥満に区別できる。Vagueは前者を男性型肥 満、後者を女性型肥満とし、体脂肪分布の計測とそ の臨床的意義を1950年代に提唱している。その後、 体脂肪分布に対する関心は薄らいでいたが、その重 要性は1980 年代になってスウェーデンのOhlson らが、糖尿病や虚血性心疾患の発症との関係を発表 して、再認識された。上半身肥満は「死の四重奏」 と呼ばれる病態を形成する徴候の一つである。身体 における脂肪の蓄積状況については、上半身肥満で あっても皮下脂肪量と腹腔内脂肪量について明らか にすべきであることが指摘されてきている。この点 について内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満という新 しい分類が提唱され、前者は同じ上半身肥満であっ ても、より肥満に伴う代謝異常(糖代謝、脂質代謝) がみられやすく、動脈硬化の危険因子といわれる 様々な生活習慣病を併発しやすいことが明らかに なっている。

このような見方を発展させてウェスト/ヒップ比 (W/H 比)をKissebah らが提唱した。すなわち、 ウェスト(腹囲)とヒップ(腰囲)を測定しW/H 比が女子の場合において0.8以上は代謝異常、とく に糖尿病の合併頻度の高いことを明らかにしてい る。体脂肪分布のパターンを簡便に、かつ、定量的 に評価する機器は現在のところないが、このように 周囲長メジャーによって、上半身と下半身で比較す ることは、体脂肪分布を示す簡便で有用な指標とな る。

周囲長による体脂肪分布の指標には、ウェスト/ ヒップ比、ウェスト/大腿比、ウェスト/上腕比、 上腕/大腿比などがあり、各部位の周囲長を計測す ることで評価できる。

上述の指標を求めるためには、ウェスト、ヒップ、 大腿、上腕の周囲長を計測する。ここで問題となる のは、ウェストをどこで測るのか、ヒップをどこで とるのかである。大腿や上腕の周囲長については、 測定位置はどの研究者でも共通しているが(図2728)、ウェスト、ヒップについては、測定位置をど こにするかによって、前述の指標の値が変わる。た とえば、ウェストといった場合、測定者によっては 図29 に示したように、非常にまちまちな測定位置 がある。ここでは、最近世界的に多くの研究者に よって採用されている測定部位を示す。

ウェストは肋骨弓下縁と腸骨上縁の間の最小横断 面で計測する(図3031)。被検者は両足をそろえ て立ち、腕を体の横に自然に下げる。その時、腹に 力が入らないようにさせる。計測するタイミング は、正常な呼吸中の呼気の終わりに行う。

ヒップは、被検者を横からみて、臀筋が最大に突 出する平面で計測する(図3031)。被検者は足を そろえて立ち、両腕を自然にたらす。被検者の計測 部位にメジャーを巻き付け、メジャーが地面と水平 になるようにして計測する。したがって、ウェスト、 ヒップの計測は、補助者がいると比較的容易にでき る。

内臓脂肪蓄積の判定は、臍の高さでのCT断面像 を撮影し、腹腔内内臓脂肪(Visceral fat、V)と皮 下脂肪(Subcutaneous fat、S)の面積比(V/S比) が指標となる。簡易的にはウェストを臍の高さ(臍 横部と腸骨上部)の二カ所の皮下脂肪厚の和の比 waist/ skinfold thickness(W/SFT)を求め17以 上のものが内臓脂肪型肥満、17 未満のものが皮下 脂肪肥満であることが示されているが、これはあく まで肥満者においてだけ適応できる。皮下脂肪厚の 腹部/大腿部比が内臓脂肪量と一定の関係を示す指 標であるといわれており、また、皮下脂肪厚と体表 面積から内臓脂肪量を推定する方法も検討されてい る。

4.まとめ

体脂肪を測定する機器を体脂肪計と総称し、各体 脂肪計による測定の原理、問題点、測定上の注意点 などを述べた。

すでに述べたように、体脂肪計の測定原理はその 種類によっても異なるし、原理は同じでもメーカー 等が異なれば同一の測定値が得られないこともあ る。真のスタンダードがないのが現状であり、問題 点でもある。したがって、用いる体脂肪計の原理、 限界点などを十分理解した上で測定を行い、その値 の解釈をしなければならない。一時点の測定値での 評価も必要であろうが、時間的な変化をとらえ、運 動や保健指導の効果をみることも重要である。時間 的な変化をとらえるためには、同一機器での測定を しなければならないことは言うまでもないことであ る。

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