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ダイエット注意報 作成日 2003/06/27

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 高たんぱく質ダイエットの減量の効果



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このドキュメントについて: 糖尿病患者と高インスリン血症患者における高たんぱく質ダイエットの減量効果の有無について調べた研究を紹介します。

(中嶋良子・廣田晃一 健康栄養情報・教育研究部)



T.はじめに

 以前、高たんぱく質ダイエットの話題を挙げましたが、2型糖尿病患者および高インスリン血症患者に高たんぱく質ダイエットが有効であるか調べた研究(1)(2)があります。豪州アデレード大学生理学部のルスコムらの研究では、それぞれの患者における、減量と安静時エネルギー消費量(REE)に対する高たんぱく質ダイエットの影響などが調べられました。その結果、糖尿病患者および高インスリン血症患者において、炭水化物とたんぱく質のエネルギー比率は、減量にもREEの改善にも関連がないことがわかりました。減量で重要なのは、やはり総エネルギー摂取量のようです。

U.2型糖尿病患者の研究(1)

 この研究では、2型糖尿病患者における、減量、REE、および食事による産熱効果(TEF)に対する高たんぱく質ダイエットの効果が調べられました。被験者は32人の2型糖尿病患者(このうち実験を完了でき、データ分析できたのは26人)で、高たんぱく質食(以下、高タ食とする)群と低たんぱく質食(以下、低タ食とする)群に分けられました。高タ食はたんぱく質エネルギー比率30%、炭水化物エネルギー比率40%、低タ食はたんぱく質エネルギー比率15%、炭水化物エネルギー比率55%で、どちらの食事も脂肪酸の割合は同等(飽和脂肪酸8%、一価不飽和脂肪酸12%、多価不飽和脂肪酸5%)とされました。食事内容は事前に処方され、最初の8週間は摂取エネルギーを1600kcalに制限した食事、その後の4週間(エネルギーバランス期)は摂取エネルギーを自由にした食事が与えられました。
 豪州で推奨しているたんぱく質所要量(成人)は、一日に体重1kg当り0.75gですから(3)、体重90kgの肥満患者(実験参加者)の所要量は67.5g(270kcal)であり、総エネルギー摂取量が2000kcalならば、そのエネルギー比率は13.5%となります。よってこの研究の低タ食は所要量に近い設定と考えられます。ちなみに、日本の場合は、体重1kg当り0.7g(4, p.66)、たんぱく質エネルギー比率だと11〜13%(4, p.74)になります。
 各被験者は2週間に1度栄養士から栄養指導と栄養評価を受け、実験の始め(0週目)と終わり(12週目)に身長、体重、REE、呼吸商(RQ)、TEFが測定、計算されました。
 実験の結果、高タ食と低タ食の総エネルギーは統計学的に同じでしたが、各三大栄養素からのエネルギーには差がありました(P<0.01)。実験開始から12週間後、平均4.6kgの減量(P<0.001)に成功しましたが、高タ食群と低タ食群の減量に有意差はみられませんでした(P=0.6)。つまり体重減少はエネルギー制限のためで、たんぱく質エネルギー比率の増減には関わりがなかったということになります。体脂肪率と総脂肪量は試験後に有意に減少(それぞれΔ3±0.04%、Δ4.5±0.04kg(11.9%)減少、P<0.05)しましたが、除脂肪量には顕著な減少はみられませんでした(Δ0.3±0.4kg、P=0.4)。この結果は、糖尿病でない肥満患者を対象に行った、高タ食の減量への影響を調べたいくつかの研究結果と同様です(16,19,20;ルスコムら(1)の引用文献番号、以下同様)。しかし、これとは逆の研究結果――高タ食(たんぱく質エネルギー比率25%)が普通食(たんぱく質エネルギー比率12%)よりも体重を減少させるという6ヶ月におよぶ研究の結果――も報告されています(4)。炭水化物と脂肪よりもたんぱく質を摂取した方が、満足感が得られるという報告もあり(21,22)、ダイエットを長期的に継続するには、高タ食が適している可能性も考えられます。
 低タ食と高タ食のTEF間には有意差が得られました(P=0.003)が、エネルギーバランス期(実験の終わり4週)に一日1920kcal摂取したとすると、高タ食と低タ食のTEF差は一日で26kcalとなります。これでは、例え6ヶ月間継続したとしても1.3kgの体重差にしかなりません。また、運動やエネルギー摂取量が一定に継続されることは稀なので、これらの理由からTEFの減量への影響はほとんどないと考えられます。 各群のREE、および男女のREEを比較すると、有意差はみられませんでした(体重、除脂肪量、脂肪量による調節を行っても有意な相関なし)。たんぱく質摂取量とREEの関係を調べた研究は、ババらによる研究(5)が1編あるのみですが、ババらはこの研究とは相反する結果――たんぱく質摂取量がREEに影響を及ぼす――と発表しています。この結果の不一致の理由には、方法論の違い、そしてババらの研究で用いられた高タ食のたんぱく質エネルギー比率が、この研究の高タ食たんぱく質エネルギー比率の約2倍するという点に関連しているかもしれません。
 以上をまとめると、2型糖尿病患者における短期のダイエットでは、炭水化物とたんぱく質のエネルギー比率を変化させても、REEの低下やTEFの上昇はなく、体重減少への効果はないと結論づけられます。短期間で減量するのに最も効果的なのは摂取カロリーの低減です。ただし長期的なダイエットでは、高タ食の方がより満腹感を与える可能性が残っており、その結果、より多く体重を減少させられるかもしれません。これについては長期的な研究が必要で、また性別のエネルギー消費および体組成への効果を知るためには、より大規模な研究が必要です。

V.高インシュリン血症患者の研究

 ルスコムらの別の研究では、高インシュリン血症患者を対象に、高たんぱく質ダイエットによる減量、TEE、REE、RQ、TEFが調べられました。被験者は空腹時血漿インスリン濃度が12mU/l以上、BMI27〜43kg/m2以上の20〜65歳の36人(男10、女26人)で、高タ食群と低タ食群に分けられました。高タ食と低タ食のたんぱく質と炭水化物エネルギー比率および脂肪酸の割合はU節で紹介した研究のものと全く同じです。食事内容は事前に処方され、最初の12週間はエネルギー制限食(総エネルギー制限〜30%)、その後の4週間は摂取エネルギーを自由にした食事が与えられました。被験者は2週間に1度栄養士から栄養指導と栄養評価を受け、実験の始め(0週目)と終わり(16週目)に体重、体組成、TEE、REE、RQ、TEF、運動によるエネルギー消費量(PAEE)が評価されました。
 実験後の体重減少の平均はΔ7.9±0.6kgで、高タ食群と低タ食群の減量に有意差はありませんでした(それぞれΔ7.9±1.1、Δ8.0±0.7kg)。つまり、体重減少は総摂取エネルギーの影響を受けるものの、たんぱく質と炭水化物のエネルギー比率の影響は受けないということです。この結果は、ルスコムらの研究(23;ルスコムら(1)の引用文献番号、以下同様)やその他の研究結果とも一致します(16、21)が、ババらの研究(13;U節の文献5と同じもの)とは相反します。REEに関しても、ババらの研究では高タ食の影響が示されましたが、この研究では高タ食の影響はみられませんでした。この不一致の理由は、既にU節で述べたように、それぞれの研究でたんぱく質エネルギー比率に差があるためでしょう。
 TEEは、実験後低下しました(Δ4.2%)が有意差はみられませんでした。これとは反対の結果――たんぱく質の摂取量を高めるとTEEおよび睡眠時の代謝率の低下を抑える――が、ホワイトヘッドら(21)による研究で唯一示されていますが、この不一致も、各研究で用いられた食事のたんぱく質エネルギー比率に差があったためだと考えられます(ホワイトヘッドら(21)の高タ食と低タ食のたんぱく質エネルギー比率の差21%に対し、この研究での実測値の差は12%)。あるいは、この研究では被験者間で差が大きかった(36人中15人はTEEが8%以上低下、7人は8%未満の低下、14人はTEEが増加)、または測定方法に差があったためかもしれません。
 TEFもU節の結果と同様に、各食事群における実験前後のTEFは低タ食群よりも高タ食群で高まりました。しかし、低タ群と高タ群の差は0.8〜2%の差であり、体重減少にはほとんど影響ないと思われます。
 PAEEに関しては、0週目と16週目では有意差がありませんでしたが、個人差が大きく41%の測定誤差があったため個人の細かい変化が見落とされてしまった可能性があります。
 RQについては、食後のRQも16週間のダイエット期間を経たときの空腹時RQも、炭水化物摂取量がより多かった低タ食の方が高い結果となりました。ルスコムらは、体重が減少するとインスリン抵抗性が改善され、それによってRQが高まるだろうと予測していましたが、結果は彼らが期待したほど高い値にはなりませんでした。これは、高インスリン血症患者では、空腹時に稼動している脂質酸化が、摂食後グルコースの取り込みへうまく切り換えられないことを意味しています。つまり、高インスリン血症患者では、減量すると脂質酸化から糖酸化への切り換え能力が低下するため、切り換え能力の高い人よりもその体重を維持するのが難しいといえます。
 以上をまとめると、糖尿病患者と同様に、インスリン抵抗性のある人の減量にも総摂取エネルギーが問題であり、たんぱく質と炭水化物のエネルギー比率は関係がありません。高タ食には、減量を阻害するエネルギー消費量の低下を防ぐ効果はありませんが、長期的に減量した体重を維持する、あるいはエネルギー制限をすることに対する効果の有無を判断するには今後新たな研究を行う必要があるでしょう。


引用文献:

  1. Luscombe, N.D., Parker, B., Clifton, P.M., Wittert, G., & Noakes, M. (2002). Effects of Energy-Restricted Diets Containing Increased Protein on Weight Loss, Resting Energy Expenditure, and the Thermic Effect of Feeding in Type 2 Diabetes. Diabetes Care, 25(4), 625-657.
  2. Luscombe, N.D., Clifton, P.M., Noakes, M., Farnsworth E., & Wittert, G. (2003). Effects of a high-protein, energy-restricted diet on weight loss and energy expenditure after weight stabilization in hyperinsulinemic subjects. International Journal Obesity, 27, 582-590.
  3. National Health and Medical Research Councl. (April 1998). Recommended Dietary Intakes for use in Australia. Retrieved June 25, 2003, from http://www.health.gov.au/nhmrc/publications/diet/n6index.htm
  4. 日本糖尿病学会. (2002). 糖尿病食事療法のための食品交換表(第6版). 東京: 文光堂.



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